top02 045-453-4567 神奈川新町
コラム
2016/12/17

腰痛の85%は原因不明

1994年、アメリカの厚生省が「成人の急性腰痛治療ガイドライン」を発表しました。
そしてその2年後、イギリス医師会が「クリニカル・エビデンス」という本を出版しました。
いずれもEBM(根拠に基づく医療)を実践するための、画期的なプロジェクトです。
世界中のRCT(無作為化比較試験)論文を調査した結果をまとめ、現時点におけるエビデンス(証拠)を載せています。

 

この両者において「腰痛の画像診断に対する見解」はほとんど一致しており、従来の常識を覆すものとなっています。

 

まず「腰痛」の定義についてですが、前出の「クリニカル・エビデンス」によれば、
『腰痛とは、肋骨の下縁から臀部にかけて局在する疼痛、筋緊張あるいは硬直であり、下肢の痛みを伴う場合と伴わない場合がある』
とされており、先進諸国の国民の7割以上が、生涯のいずれかの時点で腰痛を経験すると述べています。

 

そして腰痛の病因に関しては、
『患者さんの症状とレントゲン所見はあまり相関せず、約85%の人が原因を特定できない』
と論旨しています。

 

レントゲンで原因を見つけることができない腰痛が、どうして8割以上に及ぶのか?

それは「背骨の形態変化を指摘する」という説明には、何ら科学的根拠がないことが分かったからです。

従来まで原因と考えられていた骨の変化(構造的な欠陥)は、実際には痛みを引き起こすとは限らないことが、世界中から寄せられた実験報告から判明したということです。

 

それでは、いったいどのような実験が行われたのでしょうか?
当院コラム「EBM(根拠に基づいた医療)とは・後編で紹介したとおり、画像診断に対する横断的研究の成果といえます。

具体的には、腰痛のある人々と腰痛のない人々のレントゲン写真を比較するという手法によって明らかにされました。

以下に腰痛とレントゲン写真の関係について、いくつかの実験結果を紹介してまいります。

 

背骨の腰の部分は、5つの骨からできています。
これを腰椎といいますが、一般に腰椎は前方にゆるやかなカーブを描いています(生理的前彎)。
このカーブの消失(腰椎の直立)やカーブが強すぎるもの(腰椎の過前彎)も、「痛みの原因」とされています。
それは過去のコラムでもお話ししたとおり、整形外科は『形の変化=痛みの変化』と考えているからです。

 

ところが、「痛みのない200名」「急性腰痛の200名」「半年以上続く慢性腰痛の200名」の3つのグループにおいて、それぞれの腰椎前彎の角度をレントゲンで調べた結果、この3つのグループ間で違いはありませんでした。
これによって、背骨のカーブと痛みの間には何ら相関性のないことが確かめられたのです。

 

次に、腰椎すべり症の場合はどうでしょうか。
腰椎すべり症とは、腰の骨の並びが前後にずれてしまっているものです。
腰痛のある308名と症状のない376名を調べた実験では、両グループともにすべり症が約3%見つかっています。
つまり腰痛があってもなくても「すべり症の変化」は同頻度に見つかるのです(単一の実験報告ではなく、複数の論文において同様の結論が出されています)。

 

では、腰椎分離症の場合はどうでしょう。
実は日本人の約6%に分離があることが分かっており、自覚症状のない人も大勢います。
これもすべり症と同様の実験において同じ結果が得られており、腰痛との因果関係は証明されておりません。

 

それでは、分離とすべりの両方が合併している分離すべり症ではどうでしょうか。
1996年にMuschikという研究者が次のような論文を発表しています。
プロのバレエダンサーをレントゲンで調べた結果、32%に分離症が見つかり、そのうちの8割がすべり症を合併していました。
そこで、分離すべり症のあるダンサーらと分離すべり症のないダンサーらの腰痛発生率を比較してみたところ、ほとんど差がなかったと報告しています。
つまり「分離」や「すべり」があろうとなかろうと、腰痛の出現率に差はないのです。

 

さらに、ドイツで行われた青少年のスポーツに関する実験では、分離症やすべり症のあるスポーツ選手に対して、5年間集中的なトレーニングをさせたところ、約40%の選手にすべりの増加が認められましたが、腰痛を発生させた者は皆無でした。
「分離」や「すべり」が見つかると、医師から「激しいスポーツは一生できない」と言われるケースがありますが、そうした説明には何の根拠もないわけです。

 

また、加齢に伴う背骨の老化や変形(骨が潰れている、骨が変形している、背骨が歪んでいる、骨棘が神経を触っている、などと説明されるもの)を「脊柱の退行性変化」といいます。

これらにおいても、腰痛があるグループと腰痛がないグループのレントゲンを比較した結果、両者ともに同頻度に認められるという調査報告が多数寄せられています。

「脊柱の退行性変化は老化の単なるサインにすぎず、腰痛の原因とは考えられない」というのが研究者らの共通した見解です。

 

さらに、骨の形態異常(潜在性二分脊椎、腰仙移行椎、軽度の側弯など)においても、複数の実験において腰痛があるグループと腰痛がないグループに同頻度に見つかることが分かっています。

 

このように世界中の実験報告を分析し、EBM(根拠に基づく医療)の手法に則って検証した結果、これまで腰痛の原因として考えられてきた「背骨の形態異常」の多くが腰痛とは無関係であることが分かったのです。

 

そして、これらのデータに統計学的な処理を加えていった結果、結局「腰痛の85%は原因不明」という現実に辿りついたわけです。
こうした事実は日本においても、平成17年12月の読売新聞「医療ルネサンス」の記事で紹介されています。
興味のある方は、同新聞社が発行している『医療ルネサンス・4,000回「読売新聞の医療情報」』というCD‐ROMで閲覧することができます。

 

 

お後がよろしいようで...お退屈様でした<m(__)m>

 

 

 

 

※このコラムはBFI研究会代表・三上先生の書かれたブログ記事を編集したものになります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あおぞら整骨院
http://aozora-osteopthy.com
住所:〒221-0043 神奈川県横浜市神奈川区
新町12-1京急新町第2ビル3階
TEL:045-453-4567
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2016/11/24

画像検査が意味するもの・後編 ~画像診断の矛盾~

現代整形外科は、『腰痛とは骨格の損傷、または形態異常である』

 

という大前提のもと、治療にあたってきました。

要するに、背骨のどこかに傷があるから、形に異常があるから痛むんだと考えてきたわけです。

この概念は1世紀ものあいだ、揺らぐことはありませんでした。

 

なぜこういった考え方から逃れることができなかったのか?

その答えはコラム「整形外科の歴史と慢性痛・前編後編 」で詳しくお話しさせていただいたとおりです。

 

しかし、検査技術の発達がそのような考え方を強烈に後押ししてしまったという、なんとも皮肉な背景があるのも、また事実です。

1895年にX線が発見されて以来、レントゲンによる背骨の観察が進む中で、けがの有無に関わらず様々な損傷や形態異常が見つかったのです。

 

その結果、加齢にともなう生理的な(自然な)骨の変化…つまり、骨の老化と変形までもが異常な所見としてとらえられるようになりました。

また、背骨にみられる小さな個性(生まれつきある個体差)すべてが異常な所見として指摘されるようになりました。

その例として、「潜在性二分脊椎」「腰仙移行椎」「シュモール結節」「椎体偶角離断」「前彎消失」「軽度の側弯」などがあげられます。

 

さらにCTやMRIといったハイテク画像検査の登場によって、背骨の欠陥探しにますます拍車がかかります。

そんな中、専門家たちの眼は「椎間板」に釘付けになりました。

骨と骨の隙間にある椎間板はクッションの役割があること、加齢にともなう変性を生じやすい(潰れやすい)こと、ヘルニアの原因になるなどの理由もあり「椎間板原因説」が世界を覆いつくしたのです。

 

こうして研究者たちの多くが背骨の欠陥探しに傾倒していく一方で、骨に異常が見当たらない腰痛は「なんだか分からない腰痛」として、あまり熱心に研究されませんでした。

しかし、プライマリケア(初期医療)の現場ではこうした腰痛が思いのほか多かったため、姿勢や筋肉の問題(筋肉疲労・筋力低下・姿勢異常)を指摘する医師らによって、種々の体操療法、筋肉トレーニング、ウォーキング、水泳などが指導されることになったのです。

 

このように、現代整形外科では最初に「背骨の構造的欠陥」を探します。

それが見つかった場合、修復可能なものには手術を選択し、修復不能または欠陥が小さなものには対症療法を施します。

そして、骨の異常が見つからないものには姿勢や筋肉に焦点を絞った治療をしてきたのです。

 

ところが1990年代、医療界を一変させる出来事がおこります。

EBMの登場です(EBMに関してはブログ「EBM(根拠に基づく医療)とは・後編」で詳しく紹介しています)。

 

EBMによって、従来の画像診断には多くの矛盾があることが分かりました。

 

画像検査で見出される「形態異常」の多くが、実は正常な健康人にも多く見られることが分かったのです。

「腰痛はそれまで考えられてきたようなシンプルな問題ではない。形態異常を探して修復するという考え方は通用しない」つまり、

 

「形の変化≠痛みの変化」

 

という事実が科学的に証明されてしまったのです。

 

内科、外科、産婦人科、小児科、耳鼻科などたくさんある医科の中でも、整形外科ほどEBMが脅威に映った科は他にないと思います。

「風邪の抗生物質の使われ方」どころの話ではありません。

各論が問題にされているのではなく、画像診断という考え方そのものすなわち総論が問われているからです。

 

次回はEBMによって明らかになった「画像診断の真実」について、具体例を挙げて説明してまいりたいと思います。

 

お後がよろしいようで…お退屈様でした<m(__)m>

 

 

 

※このコラムはBFI研究会代表・三上先生の書かれたブログ記事を編集したものになります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あおぞら整骨院
http://aozora-osteopthy.com
住所:〒221-0043 神奈川県横浜市神奈川区
新町12-1京急新町第2ビル3階
TEL:045-453-4567
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2016/11/24

画像検査が意味するもの・前編 ~画像診断の科学的根拠~

腰痛の患者さんが整形外科を受診すると、通常であればレントゲンを撮って診断され、その結果に沿った治療が行われます。

この時の画像検査による診断を「画像診断といいます。

 

そのため、画像に写っている骨の変化が診断名、すなわち病名となります。

骨の老化や変形が写っていれば「変形性脊椎症」、背骨の分離やすべりが写っていれば「腰椎分離症」または「腰椎すべり症」、骨と骨の隙間にある椎間板が潰れていれば「腰椎椎間板症」といった感じです。

 

それでは骨の変化がなかった場合、どんな診断になるのでしょうか?

それは「筋筋膜性腰痛症」、または単に「腰痛症」という病名がつきます。

これは原因がよく分からない腰痛という意味です。

 

症状の程度から判断して、さらに詳しい検査が必要な場合はCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(核磁気共鳴断層装置)といったハイテク画像検査を行います。

これらの検査でヘルニアが見つかれば「腰椎椎間板ヘルニア」、背骨の狭窄が見つかれば「脊柱管狭窄症」といった診断が確定します。

 

一般的な整形外科ではほぼ間違いなく画像診断を行いますが、これ以外にも腰痛を診断する方法はあるのでしょうか。

要するに、画像検査以外に腰痛の原因を探る方法はあるのか?という質問です。

 

整形外科の視点で考えるなら、その答えはNOです。

視診や触診などで身体所見も当然調べますが、これらはあくまで補助的な役割とされているため、画像検査なしでの診断というのは事実上あり得ません。

なかには例外もあるかもしれませんが、ほとんどのケースでレントゲンによる診断を行っています。

 

整形外科は「形態の異常を修復するプロ集団」です。

“形の変化”を見つけ、それを診断のよりどころにしようとするのは当たり前なのです。

というか、それこそが整形外科の本質になります。

 

つまり、整形外科にとって形態学を無視した診断」はあり得ないです。

以上の現実を踏まえたうえで、腰痛は次の2つに分けることができます。

●画像検査によって、原因を特定できるもの

●画像検査によって、原因を特定できないもの

 

医療機関によってその比率は多少変わりますが、一般的な数字として前者が15%後者が85です。

要するに、腰痛の患者さんが整形外科を訪れた場合、その8割以上は原因不明という結果が待っているのです

 

ということは、先ほど挙げた病名のなかで「骨の変化がなく、原因が分からない腰痛」すなわち「腰痛症」が8割もあるのでしょうか?

ところが、そうではありません。

実は、骨の変化を診断名にしている腰痛も、痛みの原因がどこにあるのか分かっていないのです。

たとえ「腰椎分離症」や「変形性脊椎症」などの診断名を言われても、痛みの本当の原因は分からない」…これが科学的根拠に基づいた「医学上の正式な見解」なのです。

 

画像診断による病名が痛みの原因を表しているとは限らない。

診断そのものに不確定の要素がかくれている。

これは、腰痛治療において最も根本的な、かつ重大な問題です

 

このような話をすると、「信じられない」「よくわからない」と理解に苦しむ方も多いかもしれません。

現実には、腰痛を訴えて病院に行けば、ほとんどの場合レントゲン検査を受け、画像診断にもとづく病名を聞かされるはずです。

骨に変化があればそれを指摘され、なければ姿勢が悪い、筋肉が弱っているなどと言われると思います。

 

しかし、そのような説明には一切、科学的な根拠はないのです

コラム(腰痛治療の現状)でもお話しましたが、現段階で腰痛のメカニズムに対する世界的な統一理論というのは存在しません。

脊椎の世界的権威といわれるNachemson氏も、『腰痛の原因にはいろいろな説があるが、科学的に証明されたものはない』と断言しています。

 

後編へ続く…お退屈様でした<m(__)m>

 

 

 

※このコラムはBFI研究会代表・三上先生の書かれたブログ記事を編集したものになります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あおぞら整骨院
http://aozora-osteopthy.com
住所:〒221-0043 神奈川県横浜市神奈川区
新町12-1京急新町第2ビル3階
TEL:045-453-4567
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2016/11/12

整形外科の歴史と慢性痛・後編 ~慢性痛の発見と整形外科の苦難~

1960年代、麻酔科の一部の医師が「ペインクリニック」を開設、痛みの専門外来を作りました。診療をしていく中で、いろいろな治療をしても消えない痛み、つまり慢性的に続く痛みを発見。麻酔科医の医師たちは、この痛みを慢性疼痛」略して慢性痛と命名したのです。

痛み研究の先駆者として名高いBonica博士は、その著書「Management of Pain」の中で、『慢性痛とは、疾患が通常治癒するのに必要な期間を越えているにもかかわらず訴え続けられる痛み』と述べています。

 

同じ頃、整形外科でも同様の痛み(慢性的に続く運動器の痛み)を認知し始めていました。しかし当時はケガの痛みも慢性的な痛みも、基本的には同じメカニズムのものであると認識されていました。つまり、『ケガの痛みが何らかの原因で長く続いているのが慢性痛である』という考え方です。

ちなみに、私も専門学校ではそのように習いましたし、以前勤めていた整形外科でもそのように習いました(気が付くともう10年以上前...笑)。

 

通常は、ケガそのものの修復が完了すれば同時に痛みも消えます。ケガの痛みは「生命維持への警告サイン」と言えますので、患部が癒えればそのサインを出す必要がなくなるからです。

ところがケガをした場所の修復作業が終わっているのに痛みだけが残っている。これが慢性痛だと考えられていました。

そのため、整形外科ではどのような痛みに対してもまず画像検査を行い、どこかに骨の損傷はないか、あるいは過去に傷ついた痕跡はないかと探します。

 

ところが、患者さん自身にケガをした覚えが全くない場合、「慢性痛はケガの延長線上にある」という考え方は通用しません。転んでもいないし、ぶつけた覚えもないという患者さんに対して、「あなたが思い出せないだけで、本当はどこかで捻ったのではありませんか」というような論法では、とうてい無理があるわけです。

 

そこで登場したのが、いわゆる金属疲労ならぬ筋肉疲労」という考え方です。使い過ぎ、動き過ぎ、働き過ぎが原因というわけです。

ところが、実際には肉体的な負担がない人たちにも痛みは生じます。すると、今度は筋力低下」や「姿勢異常」という概念が登場しました。

 

その一方で、肉体的な要因をどうしても見出させない人々に関しては心の問題が指摘されるようになりました。

特に1990年代以降は肉体的な問題だけでは運動器の痛みを合理的に説明することは難しいとされ、心理社会的因子(社会生活を営む上で、個人が背負う様々なストレス要因)をより重視する声が高まりつつ、現在に至っています。

 

整形外科はその生い立ちや発展の歴史からも明らかなように、その治療目的は本来、「形の正常化」と「組織の修復」です。

特に1960年代以前、整形外科医が経験する痛みの多くは「組織の損傷を知らせる警告サイン」でした。そのため痛みに対しては副産物に過ぎず、組織が修復されれば消える」という程度の認識しかなかったのです。

 

ところが、こうした警告サインとしての役割をもたない痛みである「慢性痛」が発見されます。20世紀後半における先進諸国の高度経済成長が続く中、運動器の慢性痛が爆発的に増えた結果、整形外科の苦難の歴史が始まることになります。

多くの慢性痛では、その理由となるべき患部の変化が見当たらない痛みの原因として本来あるべき傷がないわけです。

基本的に「組織の損傷を修復することを生業としてきた整形外科」にとって、それは未知の痛みでした。

 

その中の最たるものが腰痛といえます。いろいろなタイプの腰痛がある中で、「患部の変化が見当たらない腰痛」が一番多いからです。

治療する機会の多さを考えれば腰痛こそが整形外科医にとって最大の謎であり、「未知の痛み」だったと言えると思います。

しかも患部の変化が見当たらない腰痛に対しては、その治療に情熱を傾ける医師が極めて少なかったのです。臨床において大きなウェイトを占める腰痛に対して、整形外科医はなぜ熱くなれなかったのか?

 

整形外科の生い立ちを知っていただいたみなさんは、もうお分かりですよね?

「修復すべき傷が見当たらない」ということは、つまり治療すべき対象が見つからないということです。極論を言えば、「本来あるべき傷」がない時点で整形外科の仕事ではないと言っても過言ではありません。

その一方で、「本来あるべき傷」が見つかった腰痛に対しては整形外科の腕の見せ所です。思う存分、技術(手術)を発揮することができます。

 

ところが、この一番得意にしているはずの腰痛に対しても、悩ましい現実が待ち受けていました。原因と考えられる形態異常や損傷を修復しても、痛みが消えない場合があったのです。

「本来あるべき傷」が見つかり、それを手術で治したにも関わらず痛みが残ってしまう、あるいは再発してしまう...こうなると、整形外科としてはもう完全にお手上げです。訳が分からない...。

 

こうした整形外科の混乱は、実に1990年代の半ば頃まで続きました。

 

 

お後がよろしいようで...お退屈様でした<m(__)m>

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あおぞら整骨院
http://aozora-osteopthy.com
住所:〒221-0043 神奈川県横浜市神奈川区
新町12-1京急新町第2ビル3階
TEL:045-453-4567
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2016/11/11

整形外科の歴史と慢性痛・前編 ~整形外科の誕生と発展~

運動器の慢性痛(腰痛や肩こりなどに対する初期医療は、欧米ではプライマリケア医が担っています。いわゆる家庭医」が初診を担当し、投薬その他の保存療法で様子を見て、必要があれば手技療法整体やマッサージなど)の治療家を紹介し、手術適応と考えられる症例には整形外科を紹介するといった流れになっています。

 

では日本はというと、整形外科が初期医療から手術までを一貫して診ています。ですが、実はここにある問題が隠れているのです

整形外科医はあくまで手術が専門の「外科のスペシャリスト」です。大学の医局で学ぶほとんどの対象は「手術」であり、保存療法については関連書籍を読む程度で、本格的に学べる医局は極めて少ないのが現状です。

要するに、整形外科医の多くは手術のプロであって、保存療法のプロではないわけです。

 

ところが開業すると、そこに来る患者さんの99%は保存療法が対象の人たちです。そのため整形外科医は、開業してから初めて臨床経験のほとんどないまま保存療法を実践し始めるということになります。

要するに日本では、「手術のプロ」が開業してから「保存療法のプロ」を目指すという構図になっているわけです。

 

欧米では冒頭でお話ししたように、多くの場合プライマリケア医が最初に診察したうえで、そこから必要に応じて専門機関に振り分けるシステムがあるので、それぞれのプロがそれぞれの状況に見合った形で患者さんを診る流れができているわけです。

そのため、日本でも整形内科医(保存療法のスペシャリスト)やプライマリケア医を増やしていこうとする動きがあります。

 

このように、グローバルな視点で日本の整形外科を見てみると、その特殊性がよく分かると思います。患者さんを一つの診療科で診ていく体制は、ある意味で優れた診療体制です。

しかし、保存療法がメインとなる慢性痛腰痛や肩こりなど)に限って言えば、手術の専門家が終始一貫して診ていく体制は、はっきり言って十分に機能しているとはお世辞にも言えません。

 

ただし、慢性痛におけるより根本的な問題は、今お話しした診療体制の問題とは別次元のところにあります。これについては整形外科の歴史を遡って考える必要があります

 

中世ヨーロッパでは、脊椎カリエス、くる病、ケガなどによって肢体不自由となった子供たちの社会生活への復帰が問題となっていました。そうした状況に一人のフランス人医師が立ち上がります。1741年、Nicolas Andryという内科・小児科医が「L’Orthpedie」という本を書いたのです。Orthは「正しくまっすぐ」、pedieは「子供」という意味です。

この本は子供の骨格の変形を予防し、かつ矯正する方法について書かれています。この医学書こそが「整形外科」のはじまりだといわれています。

 

日本では1906年(明治39年)、東京帝国大学の田代義徳教授がOrthopedieを訳す時に「整形外科」という言葉を作り、現在に至っています。

つまり、「整形外科」は造語なのです。

 

このように子供の骨格異常を正すことから生まれた整形外科は、その後大きく成長し、はるかに多くの問題を扱うようになりました。現在では小児から大人に至るまで、人体の運動機能のほとんどを診るようになり、その範囲はほぼ全身におよびます。そしてその中心に脈々と受け継がれているものは、

 

『目に見える形態の異常を本来あるべき姿にもどす』

 

ということです。先天性の骨格異常があれば、矯正装具あるいは手術で正常な形にもどす。骨折に対しては整復し元どおりの形にもどす。腱や靭帯の断裂があれば縫合して元にもどす。

こうした「もどす」という作業には、

 

『組織の修復をもって人体の機能を回復させる』

 

という意味があります。

 

また、整形外科は20世紀に起きた2度にわたる世界大戦によって飛躍的な発展を遂げたと言われています。兵士らが負った悲惨なケガ(骨折、銃創、腕や脚の切断など)や感染症に対応する中で、さまざまな知恵と技術が生まれました。こうした経験が近代整形外科の礎になっているのです。

 

本においても、戦前戦後の整形外科では小児の骨格異常の他は骨折や脱臼といったケガの治療をメインに行っていました。つまり「痛み」という観点から言えば、慢性痛よりもケガに伴う急性痛を診る機会の方がはるかに多かったのです。

そのため当時は慢性痛の研究者など存在せず、さらに言うならば研究どころか、そもそも慢性痛という概念すらなかったのです。

 

それでは慢性痛という概念は、いつ頃どのようにして生まれたのでしょうか?実は意外にも最近のことであり、しかもこれを見出したのは整形外科ではなかったのです。

 

後編へ続く...お退屈様でした<m(__)m>

 

 

 

※このコラムはBFI研究会代表・三上先生の書かれたブログ記事を編集したものになります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あおぞら整骨院
http://aozora-osteopthy.com
住所:〒221-0043 神奈川県横浜市神奈川区
新町12-1京急新町第2ビル3階
TEL:045-453-4567
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2016/11/10

EBM(根拠に基づく医療)とは・後編 ~間違った“医学常識”を正せ~

今から数十年前のことです。フィンランドの保健当局が、健康診断や健康指導にはどのくらい効果があるのかを調べるために、以下の実験を行いました。

 

まず心血管系疾患のリスク因子を持つ40歳から45歳までの管理職1,200人を選び、くじ引きで2つのグループに分けます。そして片方の600人に対しては毎日の運動を指示し喫煙、飲酒、糖分の摂取などを控えるよう指導。さらに健康診断や栄養学的な調査などを定期的に行い、必要に応じて投薬を行います。もう一方の600人に対しては、いかなる健康管理も実施せずに放置しました。

 

この実験を15年間続けたのち、両方のグループを比較したところ、はっきりした違いが現れました。心臓や血管系の病気、死亡、自殺などの数において、一方のグループが少なかったのです。それはなんと、健康管理をしない人々でした。

この事実に衝撃を受けた医師らは、実験結果の公表を控えたそうです。

 

mp900255636

 

次に紹介するのは1970年代のイギリスでの話です。当時は手術不可能な肺がんの患者さんに対し、多種類の抗がん剤を少しずつ使う方法が専門医の間で広まっていました。副作用が少なく、効果が高いと考えられていたからです。

 

あるとき、一部の研究者らがこの治療法の有効性を評価するため、次のような実験を行いました。同様の患者さん188人に対して、「抗がん剤を4種類使う」「1種類だけ使う」「使わない」の3つのグループに分けて治療し、その後の経過を比較したのです。

すると、驚いたことに治療成績がもっとも良かったのは抗がん剤を使わないグループであり、4種類使うグループは最低だったことが分かりました。

 

mp900406576_2

 

さて、問題です。こうしたケースは医療全体の中で、ごく例外的なものでしょうかそれとも氷山の一角にすぎないでしょうか

信じられないかもしれませんが、答えは後者です。

 

今、医療は大きな転換期を迎えています。ヒトゲノム解析、ナノテクノロジーなど華々しい技術革新が進む一方、その裏では従来の医療方針を洗い直す地道な作業が進められています。それほどに現代医学の「常識」の中には危ういものが多いのです。

当たり前のように行われている検査の妥当性や治療の有効性を検証し直すプロジェクト、それがevidence-based medicine(根拠に基づいた医療)、略してEBMです。

 

mp900430721

 

EBMでもっとも重視される実験形式は次のようなものです。

まず実験対象となる患者さんをできるだけ多く集め、それを無作為に2つに分けます(場合によっては性差、年齢、職業、家族歴などを均等に振り分けることで個体分布の偏りをなくします)。そして片方のグループにはAという治療を、もう片方のグループにはBという治療をして、その後の経過を追跡します。

例えば実験対象が投薬に関するものであれば、本物の薬と偽薬をそれぞれのグループに投与し、患者さん自身も担当医もどちらの薬が出されているのか知らされないまま行われます。最後に追跡調査の結果を両グループ間で比較し、医療統計学を駆使して効果を判定するのです。

 

こうした実験形式(比較試験)にはどのような意味が隠されているのでしょうか?

それはプラセボ(またはプラシーボ)効果を排除するためです。偽薬(ショ糖やでんぷんで作った効果のないタブレット)を飲んでも、症状が改善してしまうという「プラセボ効果(心理的な思い込みによって症状が改善する現象)」によるものなのか、それとも本当に薬の成分による効果なのか、それを見極めるための実験なのです。

 

一般に偽薬を飲んだグループにも4~6割程度回復する人が現れてしまうため、その改善率と本物の薬を飲んだグループの改善率を比較して、後者の数字が優位に上回っていることが判明すれば、そこではじめて『その薬の効果は本物だ』と判定されるわけです。

 

このような実験方法を無作為化比較試験(Randomized controlled trial:RCT)といいます。

EBMではひとつのテーマに沿って行われた世界中のRCTを第三者機関が収集分析し、その結果を発表するという手順を踏みます。そうした情報が定期的に更新され、インターネットやCD-ROM、書籍などで公表されています。

そのデータをもとに各疾病のガイドラインを作成したり、現場の医師が治療方針を決めるのに役立てたりしているのです。

 

f1010136

 

EBMではRCTのほかに以下のような研究も行われています。

 

■ケースコントロール研究

疾患や病態が既に発生している患者さんのグループとそれらが発生していないグループにおいて、過去に遡って危険因子を比較するというもの。たとえば肺ガンになったグループとそうでない人のグループにおいて、それまでの生活習慣(喫煙の有無や量・運動・食事など)における危険因子を比較する。

 

■コホート研究(前向き)

あらかじめ調べておいた「病気になる危険因子」の集団がその後どのようにして発症していくのかを観察するもの。たとえば、ヘビースモーカーの集団がどのようにして肺ガンを発症していくのか、あるいは肥満の集団がどのようにして生活習慣病を発症していくのかを追跡調査する。

 

■コホート研究(後ろ向き)

既に病気を発症している集団が、それまでどのような状態(仕事・環境・栄養・運動)にあったのかを調査する。たとえば、脳卒中を起こした人々が過去にどんな生活を送っていたのかなど。

 

■横断的研究

たとえば腰痛と画像診断の関係を調べる際、腰痛の患者100人、健常者100人を集め、それぞれのレントゲン・CT・MRIの写真を比較し、その結果を分析する。

 

cimg0265

 

基本的にコホート研究は大規模な疫学調査(数万人~数十万人規模)で使われ、横断的研究は時間軸における定点観測あるいは短い期間でのデータ収集を基本とし、主に診断法に関して用いられます。

1990年代に発表された「腰痛の85%が原因不明である」という衝撃的なデータは、画像診断に関する横断的研究の成果として有名です。

 

ご参考までに、EBMによる医療の変革を知る上で一番身近な例を紹介しておきます。「風邪と抗生物質の関係」です。

抗生物質は細菌を殺す薬ですので、ウィルスには無効です。風邪の8~9割はウィルスが原因ですので、抗生物質は一般的な風邪には効きません。

 

それではなぜ風邪に処方されることが多いのか。日本では肺炎などの二次感染を防ぐ目的で使われています。ところが、EBMによって「二次感染の予防効果はない」ことが判明したため、欧米では抗生物質が風邪に処方されることは通常ありません。

日本においても日本呼吸器学会がEBMに基づくガイドラインを発表し、安易に抗生物質に頼ることを戒めていますが、いまだに「風邪は抗生物質で治す」と思い込んでいる人が多いようです。

 

mp900427831

 

インフルエンザに関しても、パンデミックが予想されるような強力なものでなければ、ヨーロッパでは「自宅安静」が一般常識であり、医師から処方される抗ウィルス薬(たとえばタミフルなど)に頼ろうとする習慣はありません。

ウィルスに負けない抵抗力、免疫力を回復させることが一番の近道であるということを知っているからでしょう。

 

「抗生物質依存社会」を変える一番の方法は、私たち一人ひとりが「本物の健康とは何か」を考え、学び、安易に病院や薬に頼るのではなく自分の健康を自分で守っていくことではないでしょうか。

これからも、医学の常識はどんどん変わっていくと思います。いや、間違った常識は正していかなければなりません。

そのためにも、「EBM(根拠に基づいた医療)」が大きなカギを握ることでしょう。

 

お後がよろしいようで...お退屈様でした<m(__)m>

 

 

 

※このコラムはBFI研究会代表・三上先生の書かれたブログ記事を編集したものになります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あおぞら整骨院
http://aozora-osteopthy.com
住所:〒221-0043 神奈川県横浜市神奈川区
新町12-1京急新町第2ビル3階
TEL:045-453-4567
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

横浜で評判のあおぞら整骨院のコラムでお体の健康に関する豆知識やアドバイスをお届けします

横浜の神奈川新町にある当院のコラムでは、お体の痛みやしびれの原因に関する豆知識、改善のためのアドバイスをはじめ、いつまでも元気にイキイキと過ごしていくために気になるオススメの健康情報について分かりやすくご紹介しております。
あおぞら整骨院のコラムでは施術を通じたスタッフのエピソードや、改善できた症例、体験談を交えた患者様のエピソードなどもご紹介しております。親しみやすい頼りになるスタッフの様子や、安心の診療の様子などもご確認いただけますので、ぜひご参考になさってください。
横浜で人気の当院では一般的なケガや痛みの保険診療、交通事故治療をはじめ、長年の肩こりや腰痛にお悩みの方に最新の改善療法もご提供しておりますので、気になる症状がある方はお気軽にお問い合わせください。